2010年4月22日木曜日

生活の相棒

僕が06年と08年にラリーで訪れたモンゴルでは、バイクが暮らしの道具として大活躍していました。ゲル住居の入口の横にあるものは、たいてい赤いロシア製バイク。06年の時点ではもう首都ウランバートルへの人々の集中が相当進んでいて各地のゲルの数はずいぶん減ってしまったと聞くところではありましたが、広い国中どこに行っても同じ風景が見られました。
定番は何と言っても写真のバイク「ИЖ Планета 5」のようです。イージ製プラネタ5。モンゴル語で5の読みは「タウ」なので、このモトツィクルは何?と訊ねると、イージだ、プラネタ・タウだよ、という返事が返ってきます。
プラネタ5には、06年に一度だけ、ゲルホテルで働く兄ィにお願いして乗ってみたことがあります。
キックで簡単に始動したエンジンは、ッパン!ッパン!というタメの効いた排気音の346cc空冷単気筒2ストローク。右足でシフトペダルをローに踏み、左手のクラッチレバーをつないで動き出すと、すぐに分かるのが粘り強さ。そして驚くほどの低重心具合。
このときの地面は上の写真のようなサンド質でしたが、グルッと小回りしようとしてみると、起き上がりこぼしのような軽いバンク感のまま前輪に適当な舵角がつき、それが切れ込む気配もないまま少し後輪がスライドしながら力強く安定して突き進んでくれます。切り返しがまた軽くて、ひと言で言って悪路で転ぶ気がしないバイク!これなら片手運転で家畜を追えちゃうだろうな、というのが第一印象でした。
あれこれの工具や部品の入手が難しい中での整備や修理のしやすさも使われ方を見る限り間違いなさそうですし、寿命も相当長そうです。ひょっとしたら世界で最強のバイクなんじゃないでしょうか。
そんな傑作バイクだということもあるんでしょう。話をしたプラネタ5の主人たちは誰もが愛車を自慢に思っている様子でした。もちろん現金収入に比して高価な財産だということもあるでしょうが、横に停まっている僕のKTMバイクを眺めながら「イージが一番強いモトツィクル」だと説明してくれる人もいました。
これは実際そうかもしれません。というのは、砂埃を上げて郊外を駈けるプラネタ5も幾度となく見たんですが、十分すぎるほど速いし、しかも多くの場合2人乗りです。馬での競争が大好きなモンゴルの人たちなら当然バイクだって、もう反射的に、誰よりも速く走らせようとしちゃうんでしょうが、プラネタ5は気持ちよくそれに応えて、きっと「いい馬だ」と彼らを納得させてしまうスポーツ性まで備えているんだと思います。これは僕の想像です。

ツーリングの相棒、オフロードスポーツの相棒、アタックの相棒と、どうしてこうもバイクは1台で満足できないのかと考えてしまう日々のなか、ふと、モンゴルを走る赤いバイクの愛され方とカッコ良さを思い出すのでした。

2 件のコメント:

  1. naoさんお久しぶりです。
    何とも怪しい(笑)ロシアンバイクですね。
    その昔、僕のおじいちゃんが乗っていたコレダに似ている!
    きっとモンゴルでは最強のバイクなのでしょう。
    僕は今までに数十台のバイクを乗り継ぎましたが、そして分かったことはライディングの楽しさとバイクの絶対的な性能とはほとんど無関係であるということでした。
    だからアフリカツインに未だに乗っているのでしょうね。
    CRF230F いいバイクでしょう?
    XL200Rを思い出します。 

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  2. >まふりかさん
    そうですね。値段やスペックとは関係なくご機嫌になれるバイクに乗っていたいなあ。
    プラネタは有名なイジェフスク機械製作工場(略してイージ、代表製品はAK-47銃)が送り出すメジャーな製品で決して怪しくはないです。有名じゃないですね(笑)。

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